2030(~2050)年の三重県・全国の神社 神社周辺の増減分析より

今回のシンポジウムでの基準は 2030 年ということですが、私の研究・分析結果は2050年までを求めたデータより紹介します。私は現在GIS という分析手法を使い、神社の周辺の人口がどのように増減するのか注目しています。

石井先生にいただいたご質問に関して二本の論文と研究ノートをまとめていますので、別途ご高覧ください。きょうは、その二本の論文で明らかにできたことを中心に紹介します。

本日の発言1 本日の発言2
2030(~2050)年の三重県の神社1

図は 2015 年の国勢調査を基に、神社の周辺の人口を表しています。具体的にはそれぞれの神社の半径 500mの範囲エリアを切り取り、その中にいる人口を面積按分(面積比率による計算)したものです。それを8 段階に分け、神社の周りにたくさん人がいる場合には青く、神社の周りに人がいない場合は赤となっています。一部の黒は0を表しています。

さらに、国土数値情報より2050 年までの将来推計人口を基に、35 年後はどうなるかということを比較しています。その結果、半径500 メートル内の人口が2015 年では最大で5,007 人だったところから2050 年には 4,686 人まで下がるということがわかりました。

また細かく見ていくと、黒いところや赤いところが少しずつ増えているところも見てとれます。ここでは、三重県全体の結果に留めますが、個別の神社の位置をプロットしていますので、特定の神社の周りの人口がどうなるのかということにも役立てられるデータです。

三重県全体のデータをグラフにしたものが下図になります。

2030(~2050)年の三重県の神社2

上段が神社数です。すでに2015 年のデータにおいて神社の周辺の人口が0。国勢調査上0という神社もあります。2050 年の将来推計人口だと0も増え、およそ300 人以下の神社が、増加傾向になります。

いっぽうで、神社の周りにたくさん人がいるという青い部分、つまり千人以上いるという神社は減っていると見てとれます。

下段のグラフはその割合です。割合が大きくなるところを見ると、25 人以下という神社が 48 社増えるのは見逃せないと思います。また、全体でも 300 人以下となる神社が増加傾向といったところも見てとれます。

以上、2015 年から 2050 年の増減について、増減率を表したのが下図です。黒い部分、茶色の部分が濃く黒くなっているところが、非常に減少率の高い神社となります。黒は、減少率 100%を表しています。

2030(~2050)年の三重県の神社3

増減率を区分すると、0%以上、つまり増えるという神社はほぼありません。9 割の神社が減ることを理解できます。減少率が、-39%以上-20%以下といったところに大きなボリュームがあります。

さらにそれ以上減っていく神社もあります。-100%から-80%減る神社も 36 社あり、これが全体の 4.4%になります。

これらのデータからは、特定の神社の人口推移がわかりますので、たとえば人口減に対する課題にどのような対策をとるのかといった場合にも、神社を個別化して対策を打てます。このように、研究成果の応用ができるかと思います。

次の図は、増減率をもう少し見やすくするためにヒートマップという形で、減り具合が大きいところを三区分であらわしました。

2030(~2050)年の三重県の神社4

左側が減り具合の大きいエリアになります。やはり海岸沿い、伊勢市も含んだ志摩、それから東紀州のヒートマップが、増減率-60%以下と強めに出ているということと、伊賀地域も強めに出ている、つまり低くなっているということがわかります。

-60%から0%になると、今度は中勢から北勢、中部から上部、名古屋に近いあたりで、ヒートマップが強くなっています。0%以上はほとんどないのですが、これについては北勢の一部で名古屋との関係を見てとれそうです。このような形で神社の周辺の人口が減るところ、増えるところをある程度可視化できました。

それを踏まえて、全国の動向についても GIS分析を行ないました。その結果は、およそ石井先生の先行研究による推定を裏付けました。下の全国の図は、推定の神社の位置を表していますが、赤くなっているところは、先ほどと同じように半径500m以内に 25 人以下という神社です。

都道府県別による神社数の多さ、少なさもありますが、東京、大阪のあたりは青く、周辺人口の多いことがわかります。そのいっぽうで、25 人以下の神社というのがかなり多く存在することがわかりました。これについては、2015 年の国勢調査データのみの分析ですので、今後新しい国勢調査、それから推定、先ほど使用した2050 年へ向けた推計のデータなどからも分析することが期待でます。

2030(~2050)年の三重県の神社5

全国の同行を都道府県別にまとめたグラフが下図になります。およそ高知県、新潟県、福島県あたりで 25 人未満の神社数が多いことがわかります。

2030(~2050)年の三重県の神社6

石井先生の先行研究と一つだけ違うところは、先生のデータでは福島県が含まれていなかったと思いますが、この分析では含めることができました。福島県もかなり多い神社が25 人以下になっていますので、ここも大切なポイントかと思います。

以上の分析結果から、あらかじめいただいたご質問に答えると、2030 年、私の場合は 2050 年までを分析すると、三重県と全国の神社における周辺人口は着実な減少を推測できます。これについては、当たり前のことを当たり前に実証したということにはなりますが、個別の神社において、その周辺人口を分析できた点は、今後の活用可能性は高いと思います。

2030(~2050)年の三重県の神社7

いっぽうで、その減り具合もある程度想定することもできます。ただ今回の分析は周辺人口を機械的に分析したに過ぎません。これらの量的な分析に対して、少なくとも神社が維持される、あるいは多くても衰退するというような質的なデータを重ねていく必要があると思います。

今後は、ほかの質的なデータとの組み合わせ、祭礼の維持状態などを掛け合わせながら、より実態に則した推計ができればと思います。

以上、報告とさせていただきます。

結論・今後の課題