庭野平和財団 『宗教と宗教学のあいだ』テーマに公開シンポジウム

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庭野平和財団による公開シンポジウム『宗教と宗教学のあいだ——現代世界の危機における宗教と宗教学の役割』(協力・本会中央学術研究所)が12月10日、東京・杉並区の佼成図書館視聴覚ホールで開催された。宗教関係者や市民ら約50人が参加した。

昨年9月、同財団の資金助成により、『宗教と宗教学のあいだ——新しい共同体への展望』(リチャード・ガードナー、村上辰雄共編著)が上智大学出版から発刊された。これを受け、同シンポジウムは、現代社会の諸問題に対し、宗教的観点から具体的解決策を探ることを目的に開かれた。

当日は、東洋哲学研究所の大西克明研究員(東洋大学東洋学研究所客員研究員)、愛知県立大学の谷口智子准教授、金光教国際センターの河井信吉所長(金光教中野教会長)がそれぞれ講演した。

この中で大西研究員は、超高齢社会の日本で、新宗教の抱える深刻な課題は「次世代への信仰継承」と指摘。高度経済成長期に教勢を伸ばした教団は、信徒同士の固い結びつきで信者数が急増したと語り、価値観が多様化した現代では、世代間の相違を認識し、「救い」を求める若者との関係を再構築する重要性を強調した。

続いて谷口准教授は、カナダやオーストラリアの先住民族が先祖から受け継ぐ土地の資源を保護するため、ウラン鉱などの採掘を行う政府や企業などに抵抗してきた事例を紹介した。水質汚濁や土壌汚染などの環境問題は、自然と人間を二つの対立するものに分離した二元論的思考に原因があると強調。「環境問題は人間の心の問題と受けとめ、人間とは、地球とは、生きるとはどういうことかを問い直す必要がある」と述べた。

一方、河井所長は、地域社会や家族形態の変化により、宗教団体の存在が希薄になっていると指摘。各教団の持つ伝統や文化を見直し、新たな価値を創り出すために、教祖が経験した宗教体験に立ち戻る大切さを語った。その上で、各信徒は教祖や開祖を仰ぎ見るだけでなく、「師が望んだ理想世界を自らに問い、その実現に向けて努力することが重要」と述べた。