宗教学とあたらしいヒューマニズム―庭野平和財団の公開シンポ ハーバード大のカラスコ教授が講演

庭野平和財団による公開シンポジウム「宗教学と新しいヒューマニズム――日本における受容と展開」(協力・「宗教と宗教学のあいだ」研究会)が6月3日、東京・千代田区の上智大学で行われた。ハーバード大学神学大学院教授のダヴィ・カラスコ氏が講演。宗教関係者や学生ら約50人が参加した。

 

カラスコ教授

シンポジウムは、2015年に同財団の国際研究助成プロジェクトの成果として発刊された『宗教と宗教学のあいだ――新しい共同体への展望』(上智大学出版)の内容をさらに深める目的で行われている。4回目となる今回は、執筆者の一人であるカラスコ氏の来日に合わせて実施された。

当日のテーマにある「新しいヒューマニズム」とは、神話や儀礼を調査し、世界の宗教思想を幅広く研究した20世紀の宗教史家ミルチャ・エリアーデが提唱した概念。講演の中で同氏は、キリスト教を基盤とする西洋的なヒューマニズム(人文主義)だけで人間を捉えるのではなく、アジアの人々や先住民族の文化を醸成してきた宗教的な風土を調査することによって、人間をより深く理解しようとした研究の系譜と意義を解説した。

 

さらに、この概念を日本で発展させた研究者の一人として、シカゴ大学で共に学び、同書の執筆者でもある故・荒木美智雄氏の研究を紹介した。それによると、近代以降、日本の民衆に支持された宗教に共通するのは、苦痛に満ちた人生に「癒やし」を与えてくれる効果があると説明。さらに、民衆宗教の各信徒が、開祖の自伝などを通して開祖の「宗教的経験」を自らに当てはめて考えるところに現代の宗教の特徴があるとした荒木氏の研究成果にも触れた。

 

ガードナー教授

この後、上智大学名誉教授のリチャード・ガードナー氏が登壇した。ガードナー氏は、現代における「新しいヒューマニズム」の事例として、キリスト教の愛の精神に基づき、アジアやアフリカの農村地域から農村指導者を招いて農業指導と共生教育を行う「アジア学院」(栃木・那須塩原市)の取り組みを挙げた。また、円の中に描かれた紆曲(うきょく)した一本道を瞑想(めいそう)しながら歩く「ラビリンス・ウォーク」の中に、自己と向き合う宗教的精神性が見られると指摘した。

2018年06月07日『佼成新聞デジタル』の記事を転載いたしました。

村上教授

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村上教授 司会挨拶内容(PDF)

カラスコ教授 講演内容(PDF)

ガードナー教授 応答内容(PDF)