再生可能エネルギーの活用事例に触れる 庭野平和財団が長野・飯田市で学習会
2017.09.20
庭野平和財団のGNH(国民総幸福)現地学習会「長野県飯田市フィールドツアー」が9月8日から10日まで行われた。同財団と交流のある諸団体から8人が参加した。
同学習会は、経済発展の数値ではなく、国民の幸福度に関わる「環境保護」「持続可能な社会経済開発」などGNHの考えを基に、豊かさの意味を考えるもので、毎年テーマを設けて各地で実施してきた。今回のテーマは、『地域の発展と人々の力――再生可能エネルギーの活用』。自然エネルギーの実用化に向けた地域の取り組みと、それを支える地域の文化的背景、自治体や市民の連携などについて学ぶため、「環境モデル都市」の長野・飯田市を訪問した。
同市は、1996年に環境文化都市構想を掲げ、2013年には、自然資源を地域の共有財産と捉え、市民が優先的に活用できる「地域環境権」を条例で定めるなど、市民と自治体が協力し、再生可能エネルギーを活用した地域づくりを推進してきた。
一行は8日、NPO法人「いいだ自然エネルギーネット山法師」の運営する化石燃料ゼロハウス「風の学舎(まなびや)」を見学。風の学舎は、地元産の木材と伝統工法を生かして建設され、太陽光発電や太陽熱温水器、雨水タンクを備えた自給施設で、多くの市民や学校が研修などで利用している。
地域おこし協力隊の藤木さんは、遠山郷の魅力を紹介した
施設見学後、平澤和人事務局長が環境保全に関わる市民と自治体の取り組みを紹介。同団体では、市の補助金を利用して、地元住民からの間伐の要請に応じ、木の切り出しや薪作りの担い手を公募する「森集人(しんしゅうじん)プロジェクト」を行っていると説明した。さらに、エネルギー自給率の低い日本の現状を踏まえ、「木の文化、和の暮らしの良さを見直す時期」と語り、地域の資源を利用した循環型社会を構築していく重要性を強調した。
続いて、飯田市遠山郷地域おこし協力隊の藤木康平さんが、大自然と、それに基づく豊かな文化などの遠山郷の魅力を紹介。地元住民の協力を得て地域の活性化に取り組んできた自らの体験に触れ、住民との交流を通して、「人の心を動かすのは人だと実感した」と心情を語った。
翌9日には、04年に同市が「環境モデル都市」に選定されたのを機に、NPO法人から会社組織に移行した、おひさま進歩エネルギー株式会社を訪れ、市民の出資によって進められている太陽光発電事業について原亮弘社長から説明を受けた。原社長は、飯田市に働き掛け、公共施設の屋根に太陽光パネルを設置した例を示しながら、市民、行政、事業者が一体となって町づくりに取り組むことで、環境問題を解決できると述べた。
この後、一行は風の学舎に戻り、飯田市美術博物館の学芸員から南信州の民俗芸能の歴史について研修を受けた。
参加者の女性は、「地域に住む一人ひとりが、自分の特性を生かしながら連帯を深めることで、町が活性化されていくと実感できた」と話した。
「日本の棚田百選」に選ばれた飯田市千代の「よこね田んぼ」。市内には穏やかな田園風景が広がる